こんにちは!Star Brain Academy の堀です。今日は純粋に数学の話です。

まず、次の問題に即答してみてください。

 

問題1
 2つのサイコロを振るとき、目の出方は何通り?

 

 

 

 

 

 

さて、何通りですか?36通りですか?

この問題は堀が、確率の導入で必ず生徒に聞く質問です。

かなり数学が得意な子であっても、不安そうに

「36通りじゃないんですか?」

空気を読むタイプの子は

「わざわざ聞くからには36通りじゃないんだろう。半分の18通り!」

このように、自信をもって答えられる人はほぼおらず、数通りの解答が出てきます。

そして、36通りという答が出た場合には、次の問題2を提示します。

 

問題2
 1円玉から500円玉までの6種類うち、硬貨2枚で支払える金額は何通り?

そして36通りと答えた生徒(以下、A君とします)に (ちょっとかわいそうですが)

堀「1円玉をサイコロの1の目、5円玉をサイコロの2の目、…と決めて、サイコロを振って出た目の硬貨を出すことにすれば問題1と同じだから36通りなんだね?」

と追い打ちをかけます。すると少し慎重派の場合は

A君「うーん。違い気がします。2枚の硬貨は同じものでもいいんですか?」

なんて聞いてきます。なかなか鋭いですね。

断っておくと、これらの問題と同じ問題が大学入試で出題されれば、出題ミスと叩かれると思います。あえて曖昧な問題を出して本質に気付いてもらうことが目的です。

堀「では、同じでもいいとしようか。サイコロだって、同じ目が出るかもしれないしね。では、その場合は36通りかな」

A君「いえ、問題2の場合は、例えば3と6の目が出る場合と6と3の目が出る場合は同じだから半分で18通りです」

堀「同じ目の場合は、重複していないんじゃない?」

A君「そうか。ということは重複しているのはゾロ目を除いた36-6=30通りだから、これを半分にして15通りでゾロ目を戻して15+6=21通りだ」

堀「そうだね。それが問題2の答です。では、問題1の答は?」

A君「同じで21通りです」

堀「でも2つのサイコロを区別するかは何も書いてないよ?」

我ながら意地悪ですねぇ…。

A君「区別しない場合は21通り、区別しない場合は36通りです」

堀「よくできました」

普通、何も指示がない場合は「同じモノは区別しない、人は区別する」というのが場合の数の暗黙の了解ですが、阪大の出題ミスなどがありましたから、これらの問題が出題されることはないでしょう。

では、なぜ多くの人が36通りと答えてしまうのでしょうか?

それは確率の問題で「サイコロ2つを振ったとき、…」という問題が非常にたくさんあり、その場合の全事象の場合の数(確率の分母)が36だからでしょう。

ここでようやく確率の話が登場します。

堀「現実的に考えて、2つのサイコロって区別できる?できない」

A君「できます」

堀「そうだね。そもそも2つと言っている時点で区別しているわけだしね。では、サイコロを白と赤というように区別して、白で3、赤で6の目が出ることを(3、6)と表すことにしよう。すると、もちろん(3、6)と(6、3)は?」

A君「別の出来事です」

堀「その通り。では『3と6の目が出る』という事象と『6と6の目が出る』という事象はどちらが起こりやすい?」

A君「『3と6の目が出る』という事象の方が『6と6の目が出る』という事象より2倍の確率で起こりやすいです」

大変飲み込みがいいA君です(^^;。

そうなのです。もし、「場合の数」の暗黙の了解に従えば「サイコロを2つ振ったときの出る目」は21通りだったわけですが、これを確率の分母に据えるわけにはいかないのです。この21通りのひとつひとつが等しい確率では起こらないためです。

場合の数と確率では、数え上げ方のルールが異なる

ことが確率を学習していく上で、まず肝に銘じておかなければならないことなのです。

場合の数は空想世界の話、確率は現実世界の話

と思うとよいでしょう。例えば、場合の数に円順列なんてのがありますが「ただし、回転して一致する並びは区別しない」なんて書いてあります。そんなこと現実にありますか?ないでしょう。円形に並べる確率の問題もありますが、その場合は回転なんて考えなくてもいいのです。

2020年からの新テストでは、対話形式の問題が出題されるようです。上のような、確率の定義を題材にした先生と生徒の会話問題も出るかもしれませんね。

では、以上の話が理解できたか確認して終わりましょう。

問題3
あなたは賭博師から次のような相談を受けた。
「3つのサイコロを同時に振り、その目に賭ける。和が9となる3数の組は
(1、2、6)、(1、3、5)、(1、4、4)、(2、2、5)、(2、3、4)、(3、3、3)
の6通りだ。目の和が10になるのも
(1、3、6)、(1、4、5)、(2、2、6)、(2、3、5)、(2、4、4)、(3、3、4)
の6通りだ。
しかし、多くの勝負をしてきた経験からするとどうも10に賭けるほうがほんの少しだけだが有利なようだ。
これはなぜか。」
この賭博師の相談に答えよ。
確率の問題ですから、3つのサイコロを区別して (便宜的に大中小とします) すべての目の出方は
     6×6×6=216通り
です。
目の和が9になる場合について、例えば(1、3、6)は大中小のどれで各目が出るかを考えると216通りの中にこのような出方は3!=6通りあります。(1、4、4)では1が大中小のどれかを決めればいいだけなので3通りです。このように考えると
     (1、2、6)、(1、3、5)、(2、3、4) → それぞれ6通りずつ
     (1、4、4)、(2、2、5) → それぞれ3通りずつ
     (3、3、3) → 1通りだけ
ですから和が9となるのは、216通りのうち
     3×6+2×3+1=25通り
です。同様に和が10となるのは
     (1、3、6)、(1、4、5)、(2、3、5) → それぞれ6通りずつ
     (2、2、6)、(2、4、4)、(3、3、4) → それぞれ3通りずつ
ですから和が10となるのは、216通りのうち
     3×6+3×3=27通り
です。よって、確かにたった2通りですが、和が10になることの方が多いのです。
これは実際に、ガリレオ・ガリレイ (1564-1642) が受けた相談だそうです。ガリレオはもちろん、きちっと答えたそうです。この時代に確率という概念はまだありません。

以上のように、定義について深く考える経験は大変に重要なことです。

Star Brain Academy では、このような基礎をしっかり身につけることを重視しています。

また、途中にあったような対話形式で、生徒と一緒に問題を共有して授業を進めていきます

新しい時代の学習に備えたいという方は是非、一度ご連絡ください。

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