国語・数学の記述問題についても英語民間試験同様、2020年度の大学入学共通テストへの導入は見送られることになりました。
[元記事11/29、12/19加筆修正]
こんにちは。スターブレインアカデミーの堀です。11月1日に文科省が「大学入試英語成績提供システムの導入見送り」を発表しました。
これを受けて何が変わったのか、また何は変わらないのか混乱されている方も多い思いますので、今回はこのあたりをまとめようと思います。現在進行形で様々な変化をしている最中なので、以下の情報はあくまで2019年12月17日現在のものであることにご注意ください。
2019年11月1日、萩田光一・文部科学相は2020年度からはじまる大学入学共通テスト(以下、共通テスト)で活用する予定だった「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ると発表しました。
「大学入試英語成績提供システム」って何かをまず知っておきましょう。そもそも共通テストは文部科学省ではなく「大学入試センター」という独立行政法人が作成、実施します。現在のセンター試験を作っている組織です。
センター試験は、この大学入試センターというところが作成、採点し、各大学へ成績を提供しているという流れです。2020年度からの共通テストの成績も大学入試センターを通して、各大学に届きます。英語民間試験も同様に大学への「成績提供システム」が稼働する予定でした。
今回の入試改革の大きい柱のひとつに「英語においての4技能(読む・聞く・話す・書く)の能力をバランスよく測る」ことがありました。これまでセンター試験では「読む」「聞く」の2技能を主に問うもので、一部に発音、アクセント、語句整序などの問題で間接的に「話す」「書く」の残り2技能を問う問題が出題されていました。大学入試センターが独自に4技能を問う試験を作れれば何の問題もないわけですが、それには採点の期間や特にスピーキングにおける技術的な問題があります。そこで、英検などのすでに4技能を測る民間試験を活用しようという流れになりました。
見送りの理由としては「経済的な状況や居住している地域にかかわらず、等しく安心して受けられるようにするためには、更なる時間が必要」とされています。つまり、公平性が担保できないことが大きい理由のようです。
この1年をかけて検討会議を設けて「仕組みを含めて抜本的に見直す」ということです。そして、指導要領が新しくなる2024年度(現中学1年生から)に検討会議の結論を反映していくことになるとのことです。新たな情報が入り次第、スターブレインアカデミーからも発信していきます。
ここはちょっと注意が必要です。確かに大学入試センターから各大学へ民間試験の結果が送られるシステムの導入は見送られましたが、民間試験自体は存在しています。また、すでに多くの国立大学はそれぞれ民間試験をどのように使うかを表明しています。例えば、11月28日まで東京大学は次の1~3のいずれかを出願要件としていました。
- 「大学入試英語成績提供システム」の参加要件を満たすと確認された民間の英語試験の成績(ただし)「CEFRのA2レベル以上に相当するもの」。
- CEFRのA2レベル以上に相当する英語力があると認められることが明記されている調査書等、高等学校による証明書類。
- 何らかの理由で上記(1)(2)のいずれも提出できない者は、その事情を明記した理由書。
※CEFR(セファールと読みます)とは、各民間試験のレベルを画一化するための指標です。英検でいうと2級以上がA2レベル以上になります。
11月29日に東京大学は上記を出願要件から外すと発表しました。他の国立大学も多くが活用しない方向です。旧帝国大では東北大以外はすべて東大と同様に「民間試験を活用しない」と発表しています。東北大は「変更しない」とのことですが、そもそもの出願要件が「CEFR における A2レベル以上の能力を備えていることが望ましい」(得点化はされません)であり、そもそも民間試験の受検は必須ではなかったので旧帝大はすべて民間試験の利用はしないという方向です。共通テスト云々とは無関係に出願要件に英語民間試験のスコアが要求されている大学も存在しているので注意が必要です。例えば、広島大では「民間試験を出願要件とはしないが、CEFR相当B2レベル以上(英検では準1級以上)の場合、共通テストの英語を満点として扱う」とされており、民間試験でしっかりとこの要件を満たしておくと極めて有利に受験することができます。以下のページですべての国立大学の発表を見ることができます。
https://www.janu.jp/news/whatsnew/20191113-wnew-minkanshiken.html
一方、私大では共通テストとは独立に英語の民間試験を入試で採用しているところが多くあります。なので、民間試験のスコアを持っていれば受験の幅が広がることは間違いありません。
2019年12月17日、正式に文部科学省から共通テストにおける国語、数学1・Aにおける記述式問題の出題を見送るという発表がありました。
共通テストでは国語と数学1・A (数学1の範囲) でそれぞれ小問として3題の記述問題が出題される予定でした。特に国語の方で
- 正確な採点ができるのか?
- 受験生の自己採点が正確にできないのでは?
- 採点業者に事前に解答が渡ることの問題はないのか?
などの問題が各所で議論になっており、結局記述式の出題は断念するという形になりました。
以前の試行調査の際の自己採点の一致率は国語では7割程度、数学では8割~9割でした。正確な自己採点が出来なければ、適切な大学への出願ができなくなってしまうという問題があります。
今後、文科省がどのような対応をとるを見守りたいと思います。堀の私見としては、やはり50万人規模の共通テストでブレなく採点することは不可能ですから、各大学がアドミッション・ポリシーを踏まえて必要に応じて記述式問題を出題するなどすることがよいように感じます。
さて、英語民間試験がなくなり、記述式問題もなくなりました。
しかし!
センター試験と共通テストの問題はかなり違った印象のテストです。特に英語では、リーディングとリスニングが100点ずつの配点になり、現在の200点、50点とは全く異なっています。また、あくまで2技能を問うもので、センター試験にあった発音やアクセント、語句整序の問題は出題しないと改めて大学入試センターは発表しているので、この点は注意しましょう。
数学でも、知識・技能に偏った問題ではなく、思考力や表現力を問う問題が出題されるのは間違いないのでその方面での対策は変わらず必要となります。例えば、正答数の不明な問題は必ず出題されるでしょう。このタイプの問題は十分に思考力を測れる問題だと思います。また、会話形式の問題や長文問題なども出題されるはずです。このようなタイプはこれまでのセンター試験には少ないのでやはり共通テストはセンター試験とは別の試験になるでしょう。
今回の件で、「なんだ。結局センター試験に戻ったのか」と考えるのは大きな間違いですよ。
スターブレインアカデミーでは、入試がどのように変わろうとも揺るぎのない学力を身につけられるよう日々の授業を行っています。今後もご注目ください。