こんにちは.Star Brain Academy の堀です.

前回に引き続き,2018年11月10日・11日に実施された大学入学共通テストの試行調査(プレテスト)の数学Ⅱ・Bの分析をお送りします!

まず,形式面ですが数学Ⅱ・Bは

  • 試験時間:60分 (現在のセンター試験数学Ⅱ・Bと同じ)
  • 問題形式:全問マークシート (記述問題はなし)
  • 問題数:大問1・大問2は必答問題(数学Ⅱ),大問3・4・5から2題選択(数学B)

となっています.数学Ⅰ・Aでは記述式問題が導入され,試験時間が10分間延びましたが,数学Ⅱ・Bは少なくとも形式面に関してはセンター試験と変わりはありません.

では,数学Ⅱ・Bはセンター試験と変わらないか?

そうではありません!

やはり,数学Ⅰ・Aと同様に「数学の問題」というよりも「数学を使っていく問題」が増えています.数学Ⅰ・AにしてもⅡ・Bにしても

定量から定性へ!

がひとつのキーワードとなっています.

現行のセンター試験は極めて定量的です.つまり,端的に言ってしまえば計算問題が主です.したがって,正確かつ迅速な計算力が問われます.つまり,単なる計算問題から,正しく概念を理解しているかを問うような問題が主になりつつあります.ただ,昨年の試行調査と比べると特に数学Ⅱ・Bではやや定量よりへ揺り戻しがあるように感じました(計算量が多い問題もかなりあります).確かに,昨年の試行調査問題に比べると取り組みやすいですが,60分という時間制限も考えると高得点を取るのは相当難しい問題セットです.したがって,あえて言うなら

定量も定性も!

でしょうか.

では,それぞれの大問ごとに特徴的な部分を見ていきたいと思います.

第1問 (30点満点)

〔1〕分野:三角関数

(1)は三角関数の定義そのものともいえる問題です.しっかりと定義を理解していれば平易です.(2)は三角関数のグラフを選ぶ問題でした.ここは真面目にグラフを描こうとするのではなく,関数の形からどのような特徴をもったグラフになるかが判断できれば即答できる問題です.このような問題は定性的な部類です.

〔2〕分野:微分・積分

前半は条件を満たす3次関数の決定問題で,よく似た問題をやったことがある受験生が多いでしょう.(3)は面積に関する問題で,この部分も計算ではなく,グラフから意味を読み取り判断する定性的な問題です.

〔3〕分野:指数・対数関数

「対数ものさし」についての問題です.もちろん,「対数ものさし」は教科書に扱われているような内容ではありません.これは「数学を使う」ような問題と言えます.問題文にある説明文を正しく読み取り,要求されていることに的確に答える訓練が必要でしょう.この手の問題の難しいところは

解法暗記では対応できない!

ということでしょうか.教科書の章末問題や一般的な入試問題をただ解いて解法を暗記していく学習スタイルでは太刀打ちできません.このような問題が2次・私大でも増えていくかもしれません.

第2問 (30点満点)

〔1〕図形と方程式

いわゆる線型計画法という問題で,これも数学を社会活動に適用するタイプの問題です.ただ,「対数ものさし」とは違い,やったことのある受験生が多かったのではないでしょうか.最後の設問では,最初の条件から少し設定変更した場合にどのようなことが起こるかを考えます.このような問題も前回の試行調査から増えているタイプです.

〔2〕図形と方程式

こちらは打って変わって典型的な軌跡の問題です.ただ聞かれていることは定性的な部分もあり,無駄な計算をしてしまった受験生が多かったと思われます.

 

ここまでが必答問題です.以降は選択問題です.これらはそれぞれ20点ずつなのは変化なしです.

第3問 (20点満点) 確率分布と統計的推測

センター試験では最後の第5問にある統計の問題が今回選択問題の最初にきました.この問題を選択するであろう受験生は少ないのが現状です.国の政策的に統計をしっかり学習して欲しいという意図なのでしょう.この分野は第4問・第5問の数列・ベクトルに比べると計算量が少なく,もし学校などできっちりと学習していればねらい目です.

第4問 (20点満点) 数列

漸化式の解き方について,太郎さんと花子さんの会話にしたがって問題を解いていく形式です.内容は,難関大では常識ですが,やったことがなければ難しいタイプの問題で経験の差が出てしまう問題でした.

第5問 (20点満点) ベクトル

立体図形における角度の変化を考える問題です.前半はセンター試験と同様の計算問題です.後半から問題文に方針が2つ与えられており「好きな方で答えを出しなさい」と指示がありました.センター試験ではひとつの方針にしたがって,その穴埋めをしていく形式ですが,共通テストでは方向性だけが示されていて,かなりの部分を自分でやらなければならないタイプの問題が多くなりそうです.

総評

以上,長々と堀の感想を書いてきましたが,まとめると

  • 問題量は相変わらず多い.しかし,数学Ⅱ・Bは60分のまま!
  • 定性的な問題も多いが,計算量の多い問題も少なくない
  • 経験の有無で大きく差がつく問題が多い

といったところでしょうか.数学Ⅰ・Aの分析でも書きましたがセンター試験対策と共通テスト対策は異なったものになっていきそうです.対策は

  • 定性的な問題を瞬時に判断できるレベルで各分野を深く理解する学習をする.もちろん,計算力も必要.
  • 難関大では常識とされているレベルまで問われるため,そのレベルまで手を出しておく必要がある.

といったところです.

以上,試行調査数学Ⅱ・Bの分析でした.いかがでしたでしょうか.特に現在高校1年の方は大学入試改革元年の受験生になります.学習に関して,ご相談があればぜひお問合せください.