こんにちは!

スターブレイン アカデミーの津久井(つくい)です。

 

前回からシリーズとして「大学入試改革」を扱っています。

最初に前回分の内容をおさらいすると、、、

「大学改革 in 2020」の骨子は5つ

(1)学力の3要素の定義

(2)新テストの導入

(3)大学入試の見直し

(4)評価制度の導入

(5)民間テストの利用

実際の実施時期は2020年よりも遅くなる可能性がある。

意欲的な大学は、すでに新しい時代の入試を始めている。

 

という内容でした。(前回分のブログは >>> http://starbrain.jp/news/22594/

 

さて、今日は「意欲的な大学の試み」を中心に話していこうと思っていたのですが、「そもそもなぜ英語に民間テストを?」という部分を調べていたら、結構な文章量になったので、今回は「英語の民間テスト」を、次回に「意欲的な大学の試み」を話します。

 

1.そもそもなぜ英語の民間テスト利用が?

英語の入試改革では「4技能(読む・書く・聞く・話す)」が重要視されています。

しかし、現行の大学入試では、その4技能をくまなくチェックする機能はありません。

この点をわかりやすくまとめた資料が文科省のHPにあります(文部科学省 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/102_2/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2014/06/23/1348945_01.pdf

 

classroom

要点をまとめると、次の4点です。

・現行の大学入試では、4技能の割合がアンバランス

・大学入試によって、中高の指導カリキュラムが大きく左右される

・文科省にできることは、「指導」と「予防措置」のみ

・民間テストの導入によって、半強制的に4技能重視のテストに移行できる

詳細は先ほどの資料を参照していただきたいのですが、大まかな内容を見ていきましょう。

 

2.現行の入試英語は80%以上がreading、課題はspeakingの導入

同資料の中に、ベネッセの調査「2013年度大学入試の設問数に基づく調査」があります。そこでわかった、大学入試全体のバランスを、次の図にまとめました。

英語4技能の割合

(reading:80%強、writing:20%弱、listening:2%程度、speaking:0%)

*1 資料には「読解・和訳・文法・語彙だけで8割以上」と表記

*2 資料には「リスニングは2%以下」と表記

*3 上記2つの数値より20%弱(18%)と計算

*4 個別試験でスピーキングを課している大学はないと想定

まあ、この割合は以前から言われていることですね。もっとも、このデータはあくまでも「設問数ベース」なので、得点ベースでは異なる結果になる可能性もありますが、それでもかなり偏ったバランスであることには変わりないと思います

 

次は、センター試験や大学の個別試験を見てみましょう。

各大学の設問割合

・センター試験:reading80%、listening20%

・東京大学:reading50%、writing25%、listening25%*

・早稲田大学 国際教養学部:reading60%、writing20%、listening20%*

・慶應義塾大学 経済学部:reading70%、writing30%

*東大・早慶の配点に関しては、スターブレイン アカデミーの推測値

 

このデータを見てもわかるように、やはりreading(読解)の割合が大きいことがわかりますね。speakingに至っては、個別に導入している大学はありません。

 

「読解の割合が大きい」とは言ったものの、上記に挙げた大学・学部は意欲的ですね。listeningの割合が20〜25%、writingの割合が20〜30%を占めているので、いわゆる従来型の試験よりも「4技能型」の試験に近いと言えます(早慶は、学部によって全く問題形式が異なりますので、志望学部の問題形式をチェックする必要があります)。

 

特に、東大はリスニング・英作文ともに、大きな割合を割いています。設問も、マーク式と記述式両方をバランスよく取り入れています。

 

それでも、speakingの導入はできていない。どうやら、ここが新受験の最大のネックと言えますね。

 

3.中学・高校の勉強内容は、大学の試験が決める

さて、今見てきた内容に、次の2つの問題点が挙がります。

・4技能のバランスが悪い = 「使える英語」の習得ができない

・大学の試験内容 = 中学・高校の指導内容になってしまう

1つ目は、「使える英語」が何なのかという議論になってしまうので、ここでは省きます。問題なのは、文科省の資料も指摘している2つ目です。

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多くの学校にとって重要な指標に「大学合格率(進学率)」があります。

進学情報誌を開けば「早慶合格◯◯名」や「東大に合格する子どもがやっている◯◯」といった謳い文句を目にします。中学・高校にとっても、もっともアピールしやすい「結果」です。

当然、結果を出すために、指導内容や科目のバランスも決定されます。

文科省は「高大接続特別部会」を設けています。この部会は、大学(入試)が変わらないと、高校(の授業)も変われない、というジレンマを解消するためのものです。

 

もちろん、学校は社会性や人間的成長といった要素も担っていますし、文科省指定の「スーパーグローバルハイスクール(指定は123校、28年度現在)、スーパーサイエンスハイスクール(204校、平成26年度現在)などの特殊性をもった学校もあります。

しかし、多くの学校にとっては、「大学合格率」が重要な指標になっていることは間違いありません。

 

4.試験自体に手が出せない文科省の最終兵器が、民間テスト

これまでの話をまとめると、、、

・大学入試が変われば、高校・中学の指導内容も変わるが、

・肝心の大学入試が、「4技能」の測定に向いていない

 

では、文科省が各大学に対してできることがあるかと言われると、「方針」や「履修単位」という手はあったとしても、入試問題自体には手が出せません。それに、大学側が非常に手間のかかるスピーキングの試験を導入するのに二の足を踏むのもわかる気もします。

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それならば!と白羽の矢が立ったのが「英語の民間テスト」ですね。

 

もっとも、個別試験はそれとして残るのですが、「民間テストを利用して、英語の得点の変わりとする」というやり方が主流になっていくかもしれません。事実、そのように民間テストの結果を入試に反映させる大学は毎年のように増えています。

 


★☆ 今回のまとめ ★☆

・理想の英語教育(読む・書く・聞く・話すの4技能を育成)と、現実の入試問題とのギャップがある

・大学の入試問題によって、高校・中学の指導内容がひっぱられる

・ギャップを埋める手段が、英語の民間テストの利用


 

次回こそ、すでに民間テストを導入している例を見ていきましょう。来年(2017年度)の入試にも関係するお話です。

 

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