こんにちは。Star Brain Academyの平田です。
わたしはStar Brain Academyを卒業後、4年間の大学生活を終え、現在大学院で研究をしております。
今回は、先週実施された共通テストについての話題です。テーマは【共通テスト・現代社会】変わったこと、変わらなかったこと です。
今年から開始された共通テスト。ニュースや予備校の予想問題などでは、知識だけでなく理解力・思考力を問う問題が出題されると言われてきました。
何度か試行調査問題の実施はありましたが、本番は今回が初めてとあって、多くの皆さんが注目した試験だったと思います。
まず結論から言えば、今年の「現代社会」の問題は
「共通テストらしい」出題なのではないか
ということです。
その理由は、以下2点に集約されると思います。
①知識だけでは解けない、思考力を問う問題が出題された点
センター試験では、問題のほとんどが4択問題であり、知識で解ける問題が大多数を占めていました。つまり、知っているか知らないかが重要でした。現代社会では、政治・経済、倫理の範囲も出題されるため、科目の特性上センター試験においてもグラフを使った出題形式もみられましたが、とはいえ、知識で解ける問題が多数でした。
しかしながら、今年の共通テストでは、明らかに思考力を問う問題が増加し、受験生を悩ませたのではないでしょうか。
・資料を読み、この資料は何を言っているのかを把握し、習ってきた知識と照らし合わせて答えを導く
・単に知識として単語を覚えるのではなく、単語の意味を理解して初めて答えにたどり着ける
このような問題が多く出題されたように思います。
② 出題範囲については、センター試験の遺伝子を引き継いでいる点
共通テストは何もかもが新しいというわけではありません。
出題範囲に関しては、センター試験を引き継いでおり、出題内容として新しい部分は見受けられませんでした。
共通テストは日本中の多くの方が受ける試験です。やみくもに設問を難しくしたり、不公平性を生むような出題は避けるべきという、共通テストの趣旨にそったものにするためには、ある程度出題範囲やその傾向は踏襲される結果となりました。
以上2点を総合すると、
一つの知識を違う切り口から考えてほしい。受験者は少し考えて解いてね!
という、出題者の意図が読み取れる典型的な問題だったのではないかと思います。
次に、形式面から今年の現代社会を見ていきましょう。
形式面で大きく変化した点はありますが、これらは本質的な問題ではなく、内容面の変更によって派生的に生じた変更点と解釈するのが妥当だと思います。
①大問数、設問数が減少・1問が高配点に。
例年大問6問、設問数35〜36問でしたが、今回は大問5問、設問数30問に変更となりました。その結果、1問あたりの配点が高くなりました。
これは、内容面で思考力を問う問題が大幅に増加したため、
・1問を解くために時間が必要になったことへの配慮
・思考力を問うという、複雑化した問題には高配点を与えるべき
・(上記に関連して)8択〜9択問題などへは、高配点を与えるべき
という意図を持って変更が行われたと推測します。
②現代社会の平均点の低さ
2021年1月20日に大学入試センターが、各科目の平均点を発表し、現代社会は54.34点でした。この点数については、過去のセンター試験とそこまで変わりませんが、2015年以降では過去最低の点数であり、思考力を問うた問題が受験生にとっては難しかったということを示していると思います。
また、公民の科目内で平均点が20点以上の差が付き、それが問題の難易度によるものと判断されたため、2021年1月22日付で、同センターから得点調整が実施されるとのプレスリリースがなされました(受験者が1万人以下の科目は除く)。
最後に、来年、現代社会を受験する予定の方へのメッセージです。
①単に記憶するのではなく、その単語の意味や使われ方、時系列を意識した知識の確実な定着を。
表題の通りです。一つ一つの単語の意味を単に記憶をするだけでなく、単語の意味や例を一緒に覚えましょう。
また、とりわけ国際経済分野では、時系列で覚えた方が覚えやすかったり、総合的な知識の定着に役立ちます。
例えば、今年の現代社会、設問15ではGDP(国内総生産)についての問題が出題されました。
(東進ハイスクール 共通テスト解答速報2021年HPより)
答えは③AとCなのですが、GDPをただ単に「国内総生産」と覚えてはいけません。GDPは「一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額」ですので、国内であれば誰が付加価値を生み出してもGDPに含まれるのです。そして理解する際には、必ず身近な例を覚えておきましょう。
私はプロ野球を観ることが好きなので、この問題のAの例文は私にとってわかりやすいのですが、サッカーが好きな人はサッカーの例でも構いません。思いつかない人は、多国籍企業の例で考えても良いと思います。例えば、Nintendo Switchで有名な任天堂の売り上げを考えてみるのも良いかもしれません。任天堂は日本の企業ですが、アメリカでの売り上げは日本のGDPに入るのか?入らないのか?などです。
このような例を考えておけば、より発展させて、国民総所得(GNI)の考え方も同時に整理することができます。
②思考力が問われるなんて…と思わないこと。一度立ち止まって考えるようにしよう。
現代社会の問題に限らずですが、共通テストのコア科目である英語や国語は20万人ほど受験する試験です。それだけ多くの人が受験しているのですから、それらの人たちが全く理解できないような、考えても答えを出すのに数時間かかるような問題は出題されません。
今回の現代社会も、一見難しそうな問題もありました。しかし、冷静になって考えたり、一つ一つ状況を整理することで、必ず知っている知識の問題に帰着します。
しかし、立ち止まって考えることを、試験でいきなりやりなさいと言われてもすぐにはできるようになりません。訓練が必要です。
ですから、どの科目の問題を解く時でも、粘り強く考えるようにしてください。その積み重ねが、共通テストで生きると思いますし、学力の向上への一番の近道だと思います。
③来年の現代社会は「やや易化」する可能性?
前述した通り、今年の現代社会は得点調整が実施され、調整によって点数が上がった受験生が多くいらっしゃると思います。公民は「現代社会」「倫理」「政治・経済」「倫理 , 政治・経済」で構成され、「現代社会」は「倫理」の平均点との差が17点以上、「倫理 , 政治・経済」との差が14点以上ついてしまいました。(「政治・経済」は「現代社会」よりも平均点は低かったです)
今年の現代社会は例年と比べて難化したとまでは言い切れませんが、得点調整が実施されたことから、来年は「やや易化」する可能性は十分に考えられます。
とりわけ、理系国立志望の受験生は、地歴科目に加え、「現代社会」は選択肢の一つになりうると思います。
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